Do you know Stanislav Neuhaus?

みなさんはスタニスラフ・ネイガウスを知っているでしょうか。おそらく、ブーニンの父親として名前を知っている方が多いかと思います。 日本では彼の死後にデンオンがソヴィエト放送局に保管されていた放送音源を「スタニスラフ・ネイガウスエディション」と題して10枚にわ たりリリースしました。このデンオンの一大事業のおかげでようやく日本でも知名度を増してきたとはいえ、まだまだメジャーな存在とまで はいかないと思います。ここでは、ネイガウスをこれから知る方のために彼についての簡単な解説をしたいと思います。





Who is Stanislav Neuhaus?

スタニスラフ・ネイガウスは1927年、ピアニストでありモスクワ音楽院教授であったゲンリヒ・ネイガウス(Heinrich Neuhaus)の次男とし て生まれました。彼は父親のゲンリヒに1953年から57年までの4年間師事し、また彼はゲンリヒの3人の助手のうちの一人でした。来日公演は 1974年に一度だけ行ったようです。ピアノコンクールに「スタニスラフ・ネイガウス国際ピアノコンクール」というものがありますが、これ は彼にちなんで名付けられたものであります。
ネイガウスは52年の人生の中で三度結婚しました。みなさんもご存知のように、彼の息子のうちの一人にスタニスラフ・ブーニンがいます。 孫(父親はブーニンでない)にはアディ・ネイガウスがおり、彼もまたピアニストですが、いまのところCDは出していないようです。ウソです。じつは今度デビュー盤が出るそうです。みなさんもタワレコにCDを買いに走りましょう!

こういうやつです。どうか、よろしくお願いします。なんか宣伝みたいですが・・・(笑)


1949年、ネイガウスの人生を決定づけるできごとが起こります。第四回ショパン国際ピアノコンクールのロシア代表メンバーとして選ばれた のです。しかし、彼は、出発の直前、代表メンバーから除外されました。ワルシャワ行きの飛行機から文字通り「降ろされた」のです。 この事件には、当時ソ連当局が制作し、ショパンコンクールが開催されるのと同じ9月に公開を控えていたプロパガンダ映画『コンスタンティ ン・ザスロノフ』が関係しています。この映画の中に、ナチスの大佐として彼と同じ「ネイガウス」という名前の登場人物が出てきていまし た。要するに、スターリンに対する当局の大いなる忖度だったわけです。
父親のゲンリヒは「私の息子でなければよかったのに!」と言いましたが、これは「ネイガウス」という名前のために息子がコンクールに出 られなかったことを嘆いて言ったのかもしれません。いずれにせよ、このできごとがスタニスラフの人生に長きにわたって暗い影を落とした ことは間違いないでしょう。
4年後の1953年には、ネイガウスはロン=ティボーコンクールに出場しますが、大失敗を犯してしまい、自分よりも劣る(と思われる)ピアニ ストたちの後塵を拝することになります。このことも彼の時人生に大きな影響を与えました。
このとき、アルトゥール・ルビンシュタインは彼に「あなたは、コンクールに出るべきではありません。あなたたち親子はコンクール向きの ピアニストではないのだから。コンクールはスポーツであって、芸術ではないのです」と言ったと伝えられますが、この言葉はネイガウスの 音楽家としてのありかたを象徴する言葉といえましょう。
事実、彼の演奏はミスタッチが非常に多く、明らかにコンクール向きではありませんでした。しかしながら狂ったような激しさと類まれな歌 心をあわせ持ち、まるでショパンがそうしたように、その日の気分に合わせて即興的に弾き方を変えました。また、ミスタッチの多さは表現 することへのある種異常ともいえる執念に起因するものでありました。自らの理想を表現するためならば、ミスタッチなどは些細な問題にす ぎないというのです。ネイガウスは、本当の意味での「音楽家」でした。
1964年10月10日、父親のゲンリヒが死去します。それからスタニスラフは毎年命日に父親を追悼してコンサートを開くようになりました。こ の演奏会のいくつかはCDで聴くことができます。
そして1980年、スタニスラフもモスクワ近くのペレデルキノで死去しました。52歳でした。アルコール依存症が死因の一つであったとされ、 また父親と同じように心臓も悪かったようです。
逝去のわずか一週間前に行われた生涯最後のコンサートはデンオン、Vista Vera、Scribendumによって計4回復刻されており、復刻されること の珍しいネイガウスの演奏のなかでは比較的復刻に恵まれています。



「ラスト・リサイタル」を収録したCD。ただし、右二つのVista Vera盤、Scrindum盤はアンコールのスクリャービンが収録されていないので注意。
「ラスト・リサイタル」はこちらで全編聴くことができます。



以下に管理人おすすめのネイガウスの演奏を貼っておきます。みなさんが少しでもネイガウスのことを好きになっていただければ幸いです。


ネイガウス名演リンク
かなり重いです。多分スマートフォンからだと開けません。

ネイガウスでぃすこぐらふぃ~
とりあえず勢いで作りました。おそらくCD化されたネイガウスの演奏は網羅している・・・はずです。

ネイガウス家家系図
家系図 (.png)
補助線つき家系図 (.png)
家系図 (.pdf)
ネイガウス家のほか、ブルーメンフェルド家やシマノフスキ家、パステルナーク家などのネイガウス家と関係を持った主要な家系も掲載。

ネイガウス関連リンクいろいろ。
ネイガウス一家公式サイト
スタニスラフ・ネイガウスについて(ゲンリヒ・ネイガウスJr.著)※ロシア語
ネイガウス語録
ネイガウス父子ボックス
商品説明欄に詳細なネイガウス家の年表と解説があり、とても勉強になります。
The gift of sincerity and nobility (by Andrey Mikita)
Все пианисты. История фортепиано - Нейгауз Станислав
Stanislav Neigauz - teacher (by Evgeny Levitan)
Concerts of Stanislav Neuhaus. Memories of a son
スタニスラフ・ネイガウス、生誕95周年(2022)


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Stanislav Bunin 出典:https://www.youtube.com/watch?v=TlYMpSnlzwQ Stanislav Bunin(スタニスラフ・ブーニン)は、管理人がこの世で最も敬愛するピアニストです。 彼は1966年にソ連時代のモスクワに生まれました。父にピアニストのスタニスラフ・ネイガウス、 祖父には同じくピアニストのゲンリヒ・ネイガウスを持ち、さらに祖先にポーランドの作曲家 カロル・シマノフスキを持っています。 4歳から母にピアノの手ほどきを受け、その後も英才教育を受けます。そして、1983年には史上最 年少の17歳でロン=ティボー国際コンクール優勝。翌1984年よりショパン研究家のセルゲイ・ドレ ンスキーに師事しました。 1985年には弱冠19歳でショパン国際ピアノコンクールでも優勝しています。 このときのop.34-3(通称:猫のワルツ)の高速演奏はとりわけ有名で、曲目の間では拍手しない コンクールであるにもかかわらず、演奏がおわるやいなや聴衆が感激のあまり拍手してしまうとい う異例の事態が起こりました。 また、ブーニンは「コンチェルト賞」と「ポロネーズ賞」も同時に受賞しています。 この回のショパンコンクールの模様は日本では「NHK特集」で大々的にとりあげられ、「ブーニン ・フィーバー」と呼ばれる社会現象にまで発展しました。 そんなブーニンですが、ヨーロッパではハナっから相手にされていなかったようです。オマケに 最近では、日本人にスポイルされてしまった影響か表舞台にもめったに出てきてくれなくなって しまいました。……とまあ、そんな愚痴めいたことは置いといて( ̄∇ ̄;) 出典:https://artist.cdjournal.com/d/-/1163003958 ここまで長々とブーニンについて紹介しましたが、はっきりいって彼の魅力はどんな言葉 を使おうとも言葉なんぞではまったく伝えられません。 これに関しては実際に演奏を聴いていただくのが一番てっとり早いと思います。下にリンクを張って おきますので、よろしければどうぞ。 ・ブーニン演奏リンク集  ・Bunin in Chopin Piano Competition   ・op.15-2 Nocturne No.5 in F sharp major    かなり長い動画なので該当箇所を自力で見つけるのは大変ですが、ちゃんと説明欄から飛べるようになっています。   ・op.10-12 Etude No.12 in C minor "Revolutionary"    「革命」と呼ばれるやつです。ミスタッチが多いですが、迫力があります。    また、かなりあっさりした演奏だと一般的に言われていますが、そこがまたイイんです。   ・op.25-8 Etude No.8 in D flat major    一番上のノクターンと同じ動画です。これまたあっさりした弾き方です。    「革命」よりも圧倒的にマイナーですが、じつはこちらのほうが好きだったりします。   ・op.54 Scherzo No.4 in E major   ・op.52 Ballade No.4 in F minor    かなり音小さめです。お使いの環境にもよりますが、音量最大をオヌヌメします。   ・op.34-3 Valse No.4 in F major "Valse Brillante"    これも音小さめ。上にも書いた超高速演奏で有名な「猫のワルツ」です。とても楽しそうに弾くので、見ているこちらまで楽しくなります。   ・op.53 Polonaise No.6 "Heroique" in A flat major    「英雄ポロネーズ」です。ショパンコンクールの演奏の中ではこれが一番好きです。   ・op.58 Piano Sonata No.3 in B minor 4th mov. Finale;Presto ma non tanto    第4楽章だけで、しかもなぜか途中から始まりますが素晴らしい演奏です。   ・op11 Piano Concerto No.1 in E minor    オヌヌメは第3楽章です。  ・その他   ・op.58 Piano Sonata No.3 in B minor   ・op.25-1 Etude No.1 "Aeolian harp" in A flat major   ・op64-1 "Minute waltz" in D flat major   ・Bach イタリア協奏曲 BWV971 MOV3 TOPにもどる