舟歌について
※これは未解決問題です! もはや管理人の情報収集能力では限界を迎えました。何か情報をお持ちの方は、管理人までご連絡ください。
ショパンの舟歌op.60の最初の和音はバーンと上下の音を揃えて弾くのが主流の弾き方ですが、 ロシア近辺の録音を聴いていると、不思議なことに気がつきます。ときたまこの最初の和音を アルペジョで弾く演奏が出現するのです。もちろん、ロシアの中でもこの解釈は少数派ですが、 このような解釈が出現するのはほとんどロシアだけです。これはどうしてなのでしょうか。
代表的なアルペジョ解釈の演奏は、ロシア・ピアニズムの生みの親ともいえるゲンリヒ・ネイガウスです。
また、この解釈は息子のスタニスラフにも受け継がれています。
管理人は、ゲンリヒの弟子ならばアルペジョの解釈を受け継いでいるのではないか? との予想を立てました。 結論からいうと、その予測は当たっていました。以下に弟子たちの録音を列挙します。
オレグ・ボシュニアコーヴィチ
ウラディーミル・ソフロニツキー
アレクセイ・リュビモフ
ウラディーミル・クライネフ
ちなみに、前述のスタニスラフ・ネイガウスには息子にスタニスラフ・ブーニンがいますが、 彼の演奏にはアルペジョは受け継がれていません。おそらく教育を受けた流派が違ったのでし ょう。
しかし興味深いことに、スタニスラフ・ネイガウスの孫であるアディ・ネイガウスにはちゃんとアルペジョが受け継がれています。 現役のピアニストでこの弾き方をするのはこの人だけではないでしょうか?
基本的にこの解釈はロシア系ピアニストのみで見られるものですが、わずかながらロシア国外でも録音が確認されています。
アントニエッタ・ラッジ(ブラジル)
ヨゼフ・パーレニーチェク(チェコ)
アルフレッド・ホーン(ドイツ)
この3人に関しては、同門のピアニストの録音がほとんど確認できず、管理人にはルーツを辿ることは不可能でした。 また、ゲンリヒはウクライナのドイツ系の家庭に生まれたということで、ドイツ人のアルフレッド・ホーン(ブゾーニ 門下)あたりと関係がありそうですが、二人を結びつける根拠はありません。ゲンリヒの両親はピアノ教師でありまし たが、彼自身は独学でピアノを習得したそうなので、両親からの影響も薄いでしょう。ここは、ゲンリヒが独学でピア ノを習得する過程で独自に生み出した解釈とするのが一番現実的なような気もします。
ページ冒頭にある
この楽譜
は、
国際楽譜ライブラリープロジェクト
によればKarl KlindworthとXaver Scharwenkaによって編集され1883年に出版された楽譜です。 しかしながら、この楽譜と同じように冒頭和音をアルペジョで表記している楽譜は少なくとも国際楽譜ライブラリ ープロジェクトが掲載している中では他に存在せず、編集者による独断の可能性が非常に高いです。
謎はさらに深まるばかりですが、いっこうに有力な手掛かりは発見できません。 ページ冒頭にもある通り、管理人のキャパシティーでは限界を迎えてしまいまし た。どなたか有力と思われる情報をお持ちの方はぜひ管理人までご連絡ください。
まだまだ舟歌との戦いは続きます。
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Stanislav Bunin 出典:https://www.youtube.com/watch?v=TlYMpSnlzwQ Stanislav Bunin(スタニスラフ・ブーニン)は、管理人がこの世で最も敬愛するピアニストです。 彼は1966年にソ連時代のモスクワに生まれました。父にピアニストのスタニスラフ・ネイガウス、 祖父には同じくピアニストのゲンリヒ・ネイガウスを持ち、さらに祖先にポーランドの作曲家 カロル・シマノフスキを持っています。 4歳から母にピアノの手ほどきを受け、その後も英才教育を受けます。そして、1983年には史上最 年少の17歳でロン=ティボー国際コンクール優勝。翌1984年よりショパン研究家のセルゲイ・ドレ ンスキーに師事しました。 1985年には弱冠19歳でショパン国際ピアノコンクールでも優勝しています。 このときのop.34-3(通称:猫のワルツ)の高速演奏はとりわけ有名で、曲目の間では拍手しない コンクールであるにもかかわらず、演奏がおわるやいなや聴衆が感激のあまり拍手してしまうとい う異例の事態が起こりました。 また、ブーニンは「コンチェルト賞」と「ポロネーズ賞」も同時に受賞しています。 この回のショパンコンクールの模様は日本では「NHK特集」で大々的にとりあげられ、「ブーニン ・フィーバー」と呼ばれる社会現象にまで発展しました。 そんなブーニンですが、ヨーロッパではハナっから相手にされていなかったようです。オマケに 最近では、日本人にスポイルされてしまった影響か表舞台にもめったに出てきてくれなくなって しまいました。……とまあ、そんな愚痴めいたことは置いといて( ̄∇ ̄;) 出典:https://artist.cdjournal.com/d/-/1163003958 ここまで長々とブーニンについて紹介しましたが、はっきりいって彼の魅力はどんな言葉 を使おうとも言葉なんぞではまったく伝えられません。 これに関しては実際に演奏を聴いていただくのが一番てっとり早いと思います。下にリンクを張って おきますので、よろしければどうぞ。 ・ブーニン演奏リンク集 ・Bunin in Chopin Piano Competition ・op.15-2 Nocturne No.5 in F sharp major かなり長い動画なので該当箇所を自力で見つけるのは大変ですが、ちゃんと説明欄から飛べるようになっています。 ・op.10-12 Etude No.12 in C minor "Revolutionary" 「革命」と呼ばれるやつです。ミスタッチが多いですが、迫力があります。 また、かなりあっさりした演奏だと一般的に言われていますが、そこがまたイイんです。 ・op.25-8 Etude No.8 in D flat major 一番上のノクターンと同じ動画です。これまたあっさりした弾き方です。 「革命」よりも圧倒的にマイナーですが、じつはこちらのほうが好きだったりします。 ・op.54 Scherzo No.4 in E major ・op.52 Ballade No.4 in F minor かなり音小さめです。お使いの環境にもよりますが、音量最大をオヌヌメします。 ・op.34-3 Valse No.4 in F major "Valse Brillante" これも音小さめ。上にも書いた超高速演奏で有名な「猫のワルツ」です。とても楽しそうに弾くので、見ているこちらまで楽しくなります。 ・op.53 Polonaise No.6 "Heroique" in A flat major 「英雄ポロネーズ」です。ショパンコンクールの演奏の中ではこれが一番好きです。 ・op.58 Piano Sonata No.3 in B minor 4th mov. Finale;Presto ma non tanto 第4楽章だけで、しかもなぜか途中から始まりますが素晴らしい演奏です。 ・op11 Piano Concerto No.1 in E minor オヌヌメは第3楽章です。 ・その他 ・op.58 Piano Sonata No.3 in B minor ・op.25-1 Etude No.1 "Aeolian harp" in A flat major ・op64-1 "Minute waltz" in D flat major ・Bach イタリア協奏曲 BWV971 MOV3 TOPにもどる